つくづくこの国には、「うまいことやりやがったな症候群(シンドローム)」が蔓延っている気がしてならない。確かに、「景気回復」の声をよそに、「生活が苦しい」と感じる世帯の数は六割近くにも上るという。所得も10年間で12パーセント減少しているとか。庶民の生活実感としては、「景気回復って、いったいどこの話?」というところであろう。そんななかでのセレブ事件。皆が溜飲を下げたい気持は分かるが、間違ってはいけない。彼女はあくまで被害を受けた側なのである。
また、これとはケースを異にするが、このところホリエモン、村上世彰氏、福井日銀総裁などの名前が次々にマスコミを賑わせてきた。それがルールに抵触するか否かはアンパイアの手に委ねるにせよ、これら一連のバッシング報道の背景には、「俺たちがこんなに苦労しているのに、自分だけうまいことやりやがって」という庶民感情への慰藉ネタという側面があるように思える。人は悲劇を見、哀憐を体験することで、うっせきした感情から解放され快感を覚える。カタルシスを得られるわけである。
だが、思いを致さなくてはならないのは、そんな彼らを生み出したシステムやルールの瑕疵であって、その知名度ゆえに、ある種象徴的に彼らが懲らしめられたからといって、事の本質が何ら解決するわけではないという事である。マスコミの側も「勝ち組の顛末」などと分け知り顔に総括し、揶揄している場合ではない。
「惻隠の情」という言葉もある。次々に餌を与えられ、その都度我身の憂さを晴らしても詮ない事、他人が沈んでも己が浮かぶわけでもない。こうした嫉妬に向ける負のエネルギーを、どうすれば正のエネルギーに変えられるのか。それこそが、今われわれに求められている気がするのだが……。
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うまいことやりやがったな症候群
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