――男役を10年という言葉がありますが、もうずいぶん長いですね。
「自分でも、よくこんなにひとつのことを続けてこれたと思いますね。21年です。日記でも何でも3日で終わっていたのに(笑)。じつは雪組のトップという立場に区切りをつける時、宝塚を卒業することも考えました。女優になった同期もいますが、私は男役だからこそ舞台を続けられると思ったんです。そして専科として宝塚の舞台を務めることにしました。
宝塚との出会いは、中学1年か2年の頃。たまたまTV放送でみて、なにコレ!?って。田舎にいましたし、男3人兄弟の中で育ち、空手部に入っているくらいの子供でしたから(笑)、物珍しかったですね。作品は大地真央さんの『ディーン』でした。実生活では周りはみんな坊主頭ばかりだったので、なんて綺麗な男の人がいるんだ! と(笑)。実際の舞台をみたのは宝塚音楽学校の試験の時。そこで「男役をしよう!」とすぐ決めました」
――男役は、やはり極めるのは難しいですか?
「「コレは!」というものは、まだまだ模索中です。男役というのは現実的にはいないような男性を演じますから、「コレが答えだ、正解だ」というものにはまだ出会えていません。演じるたびに、「もっともっと」と探している自分がいます。だから面白い。下級生の頃は膝を開くならどのくらいなのかとか、足先、目線、歩き方と男性の仕草を研究しました。周りには演出家の先生しかいらっしゃらなかったので、先生をじっと観察したり(笑)。アメリカ人、フランス人イタリア人といった仕草は、洋画で研究することもあり、古いものから新しいものまで、かなり観ていますね」
――本物の男性ってどんななんでしょうか?
「舞台の男役と違って、現実として、頼もしいと思いますし、日本の男性って優しい人が多いのではないでしょうか」
――轟さんからみた理想の男性とは?
「ショーン・コネリーさん。私的には男性には、優しさ・賢さ・強さを持ち合わせていて欲しいかな、と。ひとつのことに取り組んでいる姿が幾つになっても輝いて年輪を重ねている方は素敵だと思います」
――考えてみれば、会社勤めの仕事も、10年やってみなければ面白さも分からない。舞台人も同じようですね。長く仕事をしていくうえで、どんなことに気をつけていますか?
「まずは体調を整えておくことが基本です。そして、舞台ではどのような役も心を動かして、自然に出てくるものを大事にして演じるように心がけています。後輩を叱るというよりも、努力していない人のことは怒ることもあります。私たちの舞台はお客様との一期一会です。その一回しか観にこられないお客様もいらっしゃるわけですので、風邪をひいている日にいらっしゃったお客様には、心のなかで「ごめんなさい。一生懸命努めますから」と。ただ、そこで頑張って、つい無理をしてしまったこともありますが(笑)」
清く・正しく・美しくのモットーで92年のときを刻む宝塚。どのタカラジェンヌを見ても轟さんに代表されるような、生真面目とさえ思えるほどの仕事ぶりである。これこそがますますファンを増やしている原動力なのである。
![[ファイブエル] 団塊世代のエンターテイメント誌 Entertainment Premium Magazine](/img/header_title_in.gif)

轟 悠(とどろき・ゆう)
![[ファイブエル]バックナンバー](/img/side_backnumber.gif)