ようこそ ゲストさん [ログイン]


トップページ > バックナンバー > 木村政雄編集長 Special Interview > 

  • 印刷
  • 大
  • 中
  • 小

瀬戸内寂聴 作者・僧侶

色気のない男はつまらない

ちょっと不良が好きなの

木村― お幾つまで生きられるご予定ですか。

瀬戸内― いや、もう飽きた。人より濃密に生きてきましたから、もう飽き飽きしましたね。永平寺の105歳の宮崎奕保(みやざきえきほ)老師がおっしゃっているんですが、「長く生きると、縁が孤独になる」。長生きをし尽くしたら、周りが全部死んじゃって縁が孤独になるでしょう。それはそうですよね。私も懐かしい人とか恋しい人とかいっぱい死んでますよ。もう本当に縁が孤独ですよ。だから「ああ、みんな死んでるなあ」と思って。だからもう早く向こうへいきたい。

木村― うちの母もしょっちゅう、「もう死にたい」ばっかり言ってますけど、ぜんぜんその気配はないですものね。

瀬戸内― 「これが最後の小説」って言って書くんだけど、出版社は「「これが最後」って宣伝していいですか」って聞くの、そうすると、「ちょっと、わからない」。また「これが最後」って……(笑)

木村― そう言いながら、どんどん作品が生まれてくるんですね。そう思うことがいいんでしょうね。死ぬことを生きるというか。

瀬戸内― 死ぬこと、私、恐くないんですよ。それはやはり出家したせいなのかなあ。仏教というのは「あの世がある」という思想ですから、出家して30年も経ちますと、それが自然にすとんと心に入ってきているみたいですね。
 だからあの世を私は信じている。あの世がどんなだかわかりませんけど、人の魂はあるという気がするんですよ。それは死んだ人の気配を感じることがあるのね、自分の身辺に。それで「ああ、来てるな」「守ってくれてるな」という感じがあるんですね。人の念は残っているんじゃないかな。だから祈りというのは虚しくはないんですよ。祈れば、すぐにはわからないけど、ちゃんと聞いてくれているんだなあと思います。

木村― なるほど、そうですか。

瀬戸内― よく「祟る」とかって言うでしょう。あれは嘘ですよ。相当な悪いことをしても仏教は許してくれて、極楽へ連れていってくださって、仏になるんです。仏は人を祟ったりは絶対しません。むしろこちらに残した愛する人のことが気になって、愛する人を守ってくれる守護神になっているんですね。
 例えば若くして、奥さんを残して死んだとしますね。そうしたらその未亡人のことを「自分は早く死んでごめんね。あなたはこれから幸せになって」、というふうに祈ってくれていると思うんです。だから私、そういう相談を受けると、必ず「再婚しなさい」って言いますね。

木村― 最後に、瀬戸内さんがお考えになる「いい男」というのはどういう男ですか。

瀬戸内― いなくなりましたねえ、最近(笑)。やっぱり私は仕事を一生懸命している男って好きですね。仕事をしているときの顔がいちばんきれいですよ。それからやはり色気のない男はつまらないね。いくらご立派でも面白くないよね。私、ちょっと不良が好きなのよ。

木村― ちょっと不良がいいですね。ありがとうございました。

〈後記〉予定よりも30分早く、「寂庵」に着くと、既に瀬戸内さんはスタンバイされていた。やや緊張気味の私を気遣うかのように、「暑いから上着を脱げば?」「お茶を飲めば?」。
 「私が仏に近づいたのではなくて、仏が私を引っぱり寄せた」。なるほど、仏様だってこんな素敵な女性を放っておかれるわけがない。
 時折見せられる、いたずらっ子のような笑顔が何ともチャーミングだった。上気したまま乗り込んだ、帰りのタクシーの中で初めて蚊に刺されていたことに気がついた。ひょっとしてあの蚊、私に嫉妬していたのかも?(木村)

撮影=井上隆雄/構成=森國次郎

木村政雄編集長 Special Interview

一覧(37件)

ファイブエルストア

[ファイブエル]バックナンバー