「いい方向に考えれば、現状が変わらなくても、充実感を感じることができます。落ち込んでも、何も現状は変わらないからムダ。私は生まれてから、一度も落ち込んだことがないんですよ。自分を信じてあげれば、何があっても、全力で闘った結果なら納得がいく。逃げたり闘わなかったりするほうが、自分に幻滅すると思うんです。いい方向に自分を信じてあげれば、落ち込むことはありません。失敗しても、何も起こらないよりも面白い。仕事でも人生でも、すべてのことを前向きに捉えれば幸運がくる――現実は違っても、そう思えれば楽しいですからね」
同グループが注文住宅、宅地造成、分譲ホテル、ホテル、総合都市開発と事業を拡大、急成長できたのは、彼女のそんな姿勢がその大きな要因になっている。
「代表はもの作り、私は運営、サービスと役割分担をして、うまく家庭内分業ができました(笑)。家庭でも、うまく分業していますよ。といっても、家事をやってもらうことは、一切ありません。家事が好きならやってもらうけれど、夫は違いますからね(笑)。尊敬、補完しあう夫婦関係になっています」
1994年 4月1日、アパホテル株式会社社長に就任。同グループのホテル事業は1984年から始まったが、その時点では北陸中心に八棟。彼女の社長就任は、全国展開を見据えてのことだった。
「私は生まれながらに愛想がよく、モチベーションが高く、いつも機嫌がいいので、サービス業には向いていると思うんです。とくに人をおもてなしするという女将の立場は自然体でできる仕事だから、いまの仕事は天職だと感じています」
〈花ごころ〉が、APAホテルのモットーだと言う。さりげなく、温かく真心のこもった、人をもてなす心である、と。
「一夜の命を預けるんだから、名前を知らないホテルは泊まりにくいと思う。ですから、APAホテルの名前をみなさんに知ってもらいたかったんです」
自ら広告塔となったのも、安心のもてなしのためだったのである――この7月には、日本最高層ホテルである地上50階のアパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉をオープンさせている。
「人生一回きり、どういう局面になっても挑戦を続けていきたい。自分の人生は自分が主役。主演女優賞をもらうためには、自分で頑張るしかないですよ」
真夏の青空のように爽快な笑顔を見せながら、元谷社長は最後にそう言った。
撮影=坂口トモユキ/取材・文=羽柴重文(over-all)
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