まず最初の名人は、紀州備長炭の名匠玉井又次さん(八一)。
赤々ゴウゴウと燃える釜の前に立つと何故か身体が引き締まり、前日の予習なんぞ何も意味しない事を痛感。自分のケチな考え方が先人たちに申し訳なく、安易な気持ちを悔いました。そんな気持ちのなか玉井さんは快く取材に応じて頂き炭焼きの伝統、歴史、海外パラオ、フィリピン炭焼き事情、マングローブの木で作る炭のお話しから、白炭と黒炭の違いまで楽しくお話を聞かせて頂きました。
その様な話をいつも炭焼き体験に来られる方にされるそうで、今年五一歳になるレポーターの私にとって、玉井さんから出てくる言葉に懐かしさを感じ、人間と自然のバランスが全ての幸せの元なんだと教えられました。紀州備長炭の玉井さん、ロハス生活のどんな有名な学者から聞く言葉より説得力がありました。
続いて、大阪府から白浜町日置川に移住して二年と三ヶ月の鮎釣り名人、戸梶聖夫(六二)さんを訪ねました。大阪在住時代にはご夫婦とも小学校の先生をされ、ご主人の聖夫さんは、根っからの釣りマニア。特に鮎釣りに関してはスペシャル大先生。日置川の魅力を尋ねると、ニンマリとした表情でこう語って頂きました。
「日置川の魅力に引き込まれたのは事実ですが、いくら景色や食べ物が美味しいと言ってもそれだけで永住の地にはならないもんですよ。私たちも地域の皆さんに受け入れて頂く様に努力といいますか、五年間はよそ者が住ませていただくという気持ちでいますし、それが地域の方たちとのコミュニケーションの近道だと思います。それに、ここの人たちは、普段は少し距離をおいて接してくれている。その距離感が、とても心地いいんです。」先日、おとり用鮎を入れておく井戸が、近所の方の協力により完成し、そのお返しに鮎釣りの秘訣を伝授した戸梶さん。何気ないエピソードにも地域へのとけ込み具合が垣間見れた。ちなみに、奥様の章子さんはカメラファン。夫婦ともにスローライフを満喫している姿が印象的でした。
夕食では、日置川の良さを伝えるべく、「大好き日置川の会」の皆さんに、民宿前田屋に集まって頂きました。皆さんの地域を愛する気持ちについついとお酒も入り、枚挙に暇がない程熱く語って頂きました。五年間通いつめた後、埼玉県からIターンしてきた鈴木さんによる陶芸教室や、鮎釣りの後に入ったえびね温泉も最高!肌がスベスベになりました。裸のお付き合いが出来る素晴らしさ、人の良さに触れた取材でした。
久しぶりに親戚の伯父さんや伯母さんに会えた様な、この歳になって叱られたり誉められたり、私の周りの環境ではあまり意見をくれたり、指導をしてくれたりする人が居なくなっていたのに気づきました。取材時は大雨で、日置川に着いた時に重い気持ちだったのが正直な気持ちでした。雨のため清流日置川の景観にもカメラをあまり向けるところも無く、不安が先に立ったのですが、結局私の思い出は地域の何とも言えぬお人よしで真直ぐな人情の里(和歌山気質)を取材で堪能させて頂いたことだったと思います。私がこの地に移住するならば、ファッションクリエイターのアトリエを作り、田舎と都会の感性を融合したスタイルが発信できる、ニューヨークのSOHOのような拠点を作りたいです。
![[ファイブエル] 団塊世代のエンターテイメント誌 Entertainment Premium Magazine](/img/header_title_in.gif)




