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【和歌山】 2007年1月 第2号

Let's WAKAYAMA LIFE「都会を離れ、和歌山で次なる自分を探す旅」紀美野町(旧美里町、野上町)編

レポーター写真

今回のレポーター

廣田 和彦(59)

広告関係のプロデュースや地域情報誌の発行、映画やビデオの製作を手がけてきた。元俳優の経験を活かし趣味で映画、CM、舞台などにも出演。現在はボランティアで子供に読み聞かせ(紙芝居、絵本、朗読ほか)を行い、講演活動も。北海道出身、大阪在住。

先輩移住者に学ぶ
わかやま田舎暮らし

――都会からの移住を考えているファイブエル世代に、田舎暮らしを紹介するこのコーナー。世界遺産の高野・熊野、ラムサール条約登録大サンゴ群落などのある和歌山を舞台に、第2回は、海南市の東、高野山の西に位置し、大阪から近くて豊かな自然に囲まれた紀美野(きみの)町を取材。これまで様々な情報を発信してきたレポーターが、先輩移住者や地元の柿農家などを訪ね、スローライフを体験。その極意を学んできました。

 「それじゃ、まずはキノコ採りに行きましょうか」。人懐っこい笑顔の長靴姿で現れたのは、9年前に東大阪市から旧美里町に移り住み、農家民宿「民宿ひらい」を営んでいる平井二嗣さん(49)。裏手の山に入っていく。山道に並べられた原木に菌打ちされ、ムクムクと育ったムキタケやシイタケを採取。ナメコは獲る時点ですでにヌルヌルしていて驚く。平井さんはIターンやUターン者を支援する地域団体の会長でもあり、自身の移住の際に応援してくれた地域の人たちに恩返しをしたい、そんな思いで引き受けた。と語ってくれた。

平井さんの隣家、西浦米子さん宅でコンニャク作りを体験。おばあちゃんの笑顔にも、癒される。 次は、お隣に住む大正生まれの西浦米子さん宅に移動。コンニャク作り体験だ。コンニャクイモを見るのは生まれて初めて。ゆでたイモを細かく刻み、お湯とともにミキサーに。さらに手でこねる。次第に粘り気が出てきて、必死で力を…。
「疲れたやろ、代わろうか?」と母親よりも上の世代の西浦さん。
いや~まだまだ大丈夫ですよ、とつい苦笑い。ひさびさのくすぐったい感覚。平井さんは言う。
「田舎では、これは隣のおばあちゃんに聞こう、これはおじいちゃんにやってもらおう、ていう感じで自然にコミュニティに参加させていただいてることに気づくんです」。西浦さんたち地域の人々に、平井さんを含め、自分も、まだまだ「若いもん」として見守ってくれているのだと感じた。

 コンニャクは粘り気が出てきたあと、寄粉(よせこ)と呼ばれる凝固剤を混ぜる。昔は胡麻ガラや藁を焚いた灰のアクを使っていたそうで、先人の知恵はスゴイ、と感心。その後、茹でること40分、手作りコンニャクはできあがった。「民宿ひらい」で夕食をいただく。(左)平井さん夫妻と、(右)川内さん夫妻。こうして「民宿ひらい」の夕食テーブルには、獲れたてのキノコに、できたてのコンニャク、鮎の天ぷら、猪鍋などが並んだ。ここに合流してくれたのは、田舎暮らしに憧れ、5年前に埼玉から移住してきた川内さん夫妻。大阪や奈良からも近く、役場の担当者が一生懸命に対応してくれたこの町が気に入り、空家に住みながら一年かけて土地を探した。建築業で培った技術を活かし、自身の手でそこにログハウスを建てたそうだ。今は農業で生計をたてているとか。そんな川内さんに移住後の感想を聞いた。
「四季を意識することが多くなりましたね。年中その日のこと、その先の野菜づくりの準備など、まだまだ勉強中なので毎日が忙しいですが、それは都会の忙しさとは違ったもの。生活の実感があり、日々の発見が本当に楽しいんですよ」と。スローライフと言うが、じつは田舎暮らしはやっぱり忙しいのだ、と再認識できた。

 さて翌日。40年以上も柿を作り続けているという柿農家、松本さん宅を訪ねる。ここ和歌山は、柿の生産が全国一位。ちなみに、梅、みかん、はっさくなどの生産量も日本一。まさに果樹王国である。小ぶりのカゴをたすきがけにして、さっそく柿の収穫。真っ赤に実った柿を採果バサミで採る。

松本さんの柿農園で、柿狩り体験後、柿チップ作りをお手伝い。 その柿を使って、商品としての「柿チップ」作りだ。手作業で皮をむき、1センチほどの厚さにスライス。この後は独自の製法で乾燥させ、厚さ1ミリのチップができあがる。そう、柿チップの原材料は「柿」のみ。添加物一切ナシの自然食品なのだ。

 「柿の値段が安い年があって…。柿を加工して、付加価値をつけようと。そこでチップにすることを考えたんです」と松本さん。農家には優れた発想力も必要なのだ。
また、「『柿が赤くなると医者が青くなる』と言われているくらいビタミンAとCが豊富なんですよ」と。さらにガン予防にいいとか、コレステロールを低下させる、解毒効果、脳の活性化、二日酔い防止と…。よく言われている柿の効果は、まさにへぇ~の連続。ちょうど我々世代にとってはとてもありがたい果物だったのだ。

 今回の取材では、まず和歌山・紀美野町ののどかな里山の風景が自然の優しさとともに、わがふるさとである釧路の懐かしい雰囲気を思い出させてくれた。そして平井さん川内さん夫婦との夜遅くまでの教育談議、西浦おばあちゃんと作ったコンニャク、松本さんとの柿チップ作り、手作りの柿の葉寿司のおいしさ…。忘れていた「ふるさと」の温もりと優しさに触れ、本来の人間の生き方を学び、勇気をもいただいた。物作りの初めての経験は、物、というより「心を創る」思いで経験できた。

 私がこの地に移住するならば、平井さんのように「田舎体感塾」のようなものを実施したい。四季の山菜摘みや、竹の手作り竿で渓流釣りなどを今の子供たちに教えてあげたいのだ。また「ふる里芸術小屋」として、和歌山の民話をテーマにした演劇や映画、講演などの上演や、さらに特産品のネット販売もいいだろう。例えば「みさと天文台で星を見る体感券」付きなど、付加価値をつけて。夢は広がっている。その実現に向けて、まずは週末に通うために紀美野町の借家暮らしから始めて、子供が独立したら本格的に移住したいと思っている。

紀美野町 INFORMATION

棚田イメージみさとチューリップ園
約3万平方メートルの棚田に、カラフルな400種40万本ものチューリップが咲き、爛漫な春を感じさせてくれる。(4月初旬~中旬)

生石高原
関西随一のススキの高原(870m)。
秋には黄金色に輝くススキのじゅうたんが見られ、ハイキングが楽しめる。

みさと天文台
全国有数の星のキレイな町に運ばれた。
海抜430メートルの山頂から、世界屈指のカセグレン式反射望遠鏡で、星座ウォッチングが楽しめる。

「わかやま田舎暮らし」についての問い合わせ
和歌山県新ふるさと推進課
TEL:073-441-2930

木村政雄より

 Iターンが成功するか否かは、その土地の風土や慣習に興味を持てるか否かにかかっていると思います。人の考え方や文化が違うのは当たり前だし、カルチャーショックを覚えることも多々あると思います。でもそれを前向きに捉えられるかどうかがポイントなのです。都会で仕事するときもそれは同じで、結局は人間関係につきるのです。「人間」という字は「人」の「間」と書き、一人では生きられないものです。人間関係はやっかいで脆弱なものであるからこそ、永遠のテーマなんだと思います。「郷に入っては郷に従え」ではありませんが、同調してシンパシーを感じてもらうことが大切なのです。
 今回レポーターを務めていただいた廣田さん、地域の皆さんとの食事風景は「どっちが田舎暮らしをしている人?」と見分けがつかない程の馴染みっぷりでしたね(笑) また、おみやげの柿チップはあんぽ柿をスライスしたような、懐かしい味で美味しくいただきました。